仮面城(日文版)-第22章
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「おかあさんは知らないようです」
「よし、じゃ、そのままにしておけ。びっくりさすといけないから。良平、おまえじぶんのへやへいって野球のバットを持ってこい」
良平がバットを持ってくると、おじさんは、それを片手にひっさげて、応接室のドアのまえまでソッとしのびよった。良平もそのあとからくっついていく。心臓がガンガンおどって、胸がやぶれそうだった。
応接室のなかにはたしかにだれかいるのだ。ガサガサという音が聞こえる。しかし、ふしぎなことにはそれにまじって、ひくいすすり泣きの声が聞こえるのである。
おじさんもそれを聞くと、さすがにギョッとして、息をのんだが、すぐに気をとりなおして、ドアのにぎりに手をかけると、いきなりぐっとむこうへ押しながら、
「だれだ! そこにいるのは!」
そのとたん、へやのなかでは、ドタバタといすやテ芝毪摔证膜胍簸筏郡ⅳ浃皮坤欷櫎橥猡丐趣婴坤筏俊
「ちくしょう、ちくしょう!」
おじさんはむちゃくちゃにドアを押したが、むこうから、つっかいぼうがしてあるらしく、十センチほどしかひらかない。
「だめだ。良平、庭のほうからまわろう」
かって口から庭へ出ると、裏木戸があけっぱなしになっている。ふたりはすぐそこから道へとびだしたが、あやしいものの影は、もうどこにも見当たらない。
しかたなしにふたりは、応接室の窓の下までひきかえしてきたが、そのとたん、ギョッとしたように息をのみこんだ。
窓のなかから、まだすすり泣きの声が聞こえてくるではないか。
良平もおじさんも、それを聞くとゾッとしたように顔を見合わせたが、すぐつぎのしゅんかん、おじさんは窓をのぼって、へやのなかへとびこんだ。良平もそれにつづいたことはいうまでもない。
おじさんが電気のスイッチをひねったので、応接室はすぐに明るくなったが、見ると、そこにはひとりの少女が、いすにしばられ、さるぐつわをはめられて、目にいっぱい涙をたたえ、むせび泣いているではないか。
おじさんはいそいでそのナワをとき、さるぐつわをはずしてやると、
「きみはいったいだれなの。どうして、いまごろこんなところへやってきたの?」
おじさんは、できるだけやさしくたずねたが、少女はただもう泣くばかりで、なかなかこたえようとはしないのだ。
「良平、おまえこの子知ってる?」
「ううん、ぼく、知りません。いままで一度も見たことのない子です」
まったくそれは見知らぬ少女だった。としは良平とおないどしくらいだろう。みなりこそまずしいけれど、かわいい、りこうそうな顔をした少女だった。
おじさんはまた、なにかいいかけたが、そのときドアを外からたたいて、
「まあ、欣三さん、良平、どうしたの。なにかあったの。いまのさわぎはどうしたの?」
そういう声はおかあさんである。見るとドアのうちがわには、大きな長いすが押しつけてある。おじさんはそれを押しのけながら、
「アッハッハ、ねえさん、なにもご心配なさることはありませんよ。どろぼうがはいったのですがね、かわいいおきみやげをおいて、逃げてしまいましたよ」
「まあ、そしてなにかとられたの」
おかあさんのそのことばに良平は、はじめて気がついたように、へやのなかを見まわしたが、すぐアッと叫ぶと、
「おじさん、おじさん、やっぱりそうだよ。どろぼうはあの剑颏踏工撙摔郡螭坤琛
その声におかあさんもおじさんも、ハッと壁のほうをふりむいたが、そのとたん、ふたりともおもわず大きく目を見張った。
ああ、どろぼうはあきらかに、悪魔の画像をぬすみにきたのである。
しかし、あの大きながくぶちから、はずすことができなかったので、ふちから切りぬいていこうとしたのだろう。半分ほど切りぬかれたカンバスが、ダラリとがくぶちからぶらさがっているのだった。
どろぼうの忘れ物
おじさんが電話をかけると、すぐにおまわりさんがやってきた。そのおまわりさんは|上《かみ》|村《むら》さんといって、たいへんしんせつな人だった。
上村さんは話を聞くと目をまるくして、
「へえ、どろぼうがこの子をおきざりに……」
上村さんはなだめたり、すかしたりして、さまざまにたずねたが、少女は泣くばかりで、ひとこともこたえない。上村さんはとほうにくれて、とうとう少女を警察へ連れていくことになった。
「ねえ、上村さん、おねがいですから、この子をあまりおどかさないでね」
おかあさんは心配そうに少女にむかって、
「あなた警察へいったら、なにもかも、正直にいうんですよ。こわがることはありませんからね。あなたは悪い子じゃない。それは、このおばさんがちゃんと、知ってますからね」
少女はそれを聞くといよいよはげしく泣きながら、おまわりさんに連れていかれた。
その日は日曜日だったので、夜があけてからも一同は、このふしぎな事件について語り合った。しかし、だれにもこの謎を、とくことはできなかった。
どろぼうが、悪魔の画像をぬすみにきたことはわかっている。しかし、あの少女はどうしたのだろうか。あの子はどろぼうの仲間なのだろうか。
みんなそれをふしぎがっていたが、しかし間もなく、その謎だけはとけた。昼すぎに上村さんがやってきて、
「やっとあの子がしゃべりましたよ。あの子は|杉《すぎ》|芳《よし》|子《こ》といって……」
と、上村さんは悪魔の画像を指さしながら、
「この剑颏い可紕僦蚊盲胜螭扦埂
それを聞くと一同は、ギョッと顔を見合わせたが、そこで上村さんの語るところによるとこうなのだった。
杉勝之助が自殺したとき、芳子はまだ七つだった。ふたりには両親がなかったので、おじの|諸《もろ》|口《ぐち》|章太《しょうた》というひとが、芳子をひきとった。そのとき章太は、勝之助の剑颏工盲陦婴辘悉椁盲皮筏蓼盲郡韦扦ⅳ搿¥饯欷い蓼榘四辘郅嗓蓼à韦长趣坤盲俊
芳子はそののち章太に育てられたが、ちかごろおじのそぶりに、へんなところがあるのに気がついた。章太はときどき、真夜中ごろ、そっと帰ってくることがあった。しかも、どうかすると、まるく巻いた布のようなものを持ってくるのだ。芳子はあるとき、ソッとそれを眨伽埔姢啤ⅳ饯欷四辘蓼à俗詺ⅳ筏俊⑿证谓}であることに気がついた。芳子はへんに思った。
ところがそのころある新聞に、ちかごろあちこちで、杉勝之助の剑踏工蓼欷毪趣いτ浭陇訾皮い郡韦扦ⅳ搿¥饯欷蛘iんだときの芳子のおどろきはどんなだっただろうか。
おじさんが、兄のかいた剑颏踏工螭扦蓼铯盲皮い搿¥胜激饯螭胜长趣颏工毪韦铯椁胜いⅳ饯欷蠍櫎い长趣摔蓼盲皮い搿
あるとき芳子は泣いておじさんをいさめた。しかし章太は聞こうとはせず、その後も勝之助の剑韦ⅳ辘颏膜趣幛皮稀ⅳ踏工螭扦毪韦馈7甲婴蠚荬沥い摔胜辘饯Δ坤盲郡ⅳ蓼丹珜gのおじをうったえるわけにもゆかない。
ゆうべもおじが家をぬけ出したので、そっとあとをつけてくると、はたしてこの家へしのびこんだ。そこでじぶんもあとからはいってきて、とめようとしたが、章太はその芳子をいすにしばりつけ、さるぐつわをはめてしまったのだというのだ。
「おそらくこの剑蚯肖辘趣盲郡椁い蓼筏幛颏趣い啤⑦Bれて帰るつもりだったんでしょうが、そのまえに発見されたんですね」
三人は話を聞いて、おもわず顔を見合わせた。
「それで、その男はどうしました?」
「あの子から住所を聞くとすぐ行ってみましたが、もちろん帰っちゃいませんよ。ところでここにわからないのは、その男がどうして杉勝之助の剑颉ⅳ饯螭胜藷嵝膜摔丹筏皮い毪韦趣いΔ长趣扦埂I激谓}には、そんなにねうちがあるのですか」
「杉はたしかに天才でした。しかし、それはごく一部のひとがみとめているだけで、世間では問睿摔筏皮い胜盲郡韦扦工椤ⅳい蓼澶Δ藗帳訾毪趣纤激à蓼护螭汀
「だからわからないのです。ひょっとするとその剑摔稀ⅳ胜摔孛埭ⅳ毪螭袱悚胜い扦筏绀Δ=}のねうちとはべつに……」
それを聞くと良平は胸がドキドキした。いままでに読んだ探偵小説などを思いだし、きっとその剑窝Yに、なにかたいせつなものがかくされているのだろうと思った。
しかし、すぐそのあてははずれてしまった。一同は悪魔の画像をがくからはずして、ていねいに眨伽皮撙郡ⅳ筏贰ⅳ伽膜摔铯盲郡长趣獍k見できなかったのだ。
こうして、一同は、奥歯にもののはさまったような、もどかしさをかんじたが、するとそこへ美也子がみまいにやってきた。美也子は欣三おじさんから、ゆうべの話を聞くと、目をまるくしておどろいていた。
「ねえ、美也子さん。あなたは杉にうらみがあるといってましたね。それはいったいどんな話なの。なにか参考になるかもしれないから、ひとつその話をしてくれませんか」
そういわれると、それ以上かくすわけにもいかず、美也子はつぎのような話をした。
美也子のうちにはエル.グレコの剑ⅳ盲俊%ē耄哎欹长趣いΔ韦稀ⅳい蓼槿倌辘ⅳ蓼辘蓼à怂坤螭昆攻讠ぅ螭未蠡窑恰ⅴ哎欹长谓}といえばたいへんなねうちがあるのである。美也子のうちにあったのは、拢弗蕙辚ⅳ驻ぅ辚攻趣颏坤い啤㈦叅韦胜肆ⅳ盲皮い雵恧坤盲郡ⅳ趣Δ丹螭夤眯肖颏筏郡趣ⅴ榨楗螗工琴Iってきたものなのだそうだった。
ところが戦後、うちがまずしくなったとき、その剑驂婴恧Δ趣筏茖熼T家に見せると、いつの間にか、にせものにかわっていたというのだ。
「父が外国から持って帰ったとき、それはたしかにほんものでした。それがにせものにかわっていたとすると、日本でだれかにすりかえられたにちがいございません。そこで思いだすのは、いまから九年まえ、杉さんがその剑蚰P搐胜工盲郡长趣扦埂
模写というのは原画とそっくりおなじにうつすことで、画家は勉強のために、古い名画をよく模写することがあるのである。
「杉さんは一月ほどうちへかよって、その剑蚰P搐胜丹い蓼筏郡ⅳ饯欷悉瑜扦磕P搐恰⒃趣饯盲辘扦筏俊